
キャサリン・ストー/作 富山房
1977年 初版 1986年 第5刷 猪熊葉子/訳 マージョリ=アン・ウォッツ/挿絵
以前読んだ『海の休暇』の前作だった/驚
閉架
私は人の荒唐無稽な夢の話を聞いたり、話したりするのが好きだけれども
今作も夢の世界がメインの舞台になっている
“心理ファンタジー”っていうジャンルがあるんだな
自分が描いたものが、夢の中で具現化される仕組みは
想像したものが現実化されるというスピリチュアルな考えにも通じる
病気や怪我で長く伏せている子どもが読んだら
不安、恐怖、イライラする気持ちに寄り添い
病に打ち勝って、健康を取り戻す手助けにもなるだろう
これだけ濃密な時間を共に過ごしたのに
続編で、ティーンになったマリアンヌがマークと再会した時
すっかり忘れていたのも子どもらしい
10歳の頃の記憶は、それがどんなに楽しくても、苦しくても、忘れてしまう
すべては移ろいゆくということだ
【内容抜粋メモ】
登場人物
マリアンヌ 10歳
トーマス 弟
チェスターフィールド 家庭教師
マーク
マリアンヌは10歳の誕生日を楽しみにしていた
10歳になったら、乗馬の稽古をしてよいと両親が約束してくれたから
でも、実際、馬に乗った後はひどく疲れて
せっかく母が作ったご馳走も食べられず
高熱を出して寝込んでしまう

医師からベッドを出てはいけないと言われ
退屈していた時、裁縫箱から特別な鉛筆を見つけて
画帳に1軒の家を描いた

医師はマリアンヌに今学期中ずっと休まなきゃならず
それを守らなければ、一生病気のままになると言ってショックを受けるマリアンヌ
母は家庭教師のチェスターフィールドに毎日来てもらい
午前中は勉強するよう約束させる
マリアンヌが画帳に描いた家の前にいる夢を見て
窓から少年が見ているが、階段がないから玄関を開けることができないと言う
チェスターフィールド先生は病気で学校に行けない子どもを何人か教えていて
その1人マークは小児麻痺で筋肉がすっかり弱り
治る見込みがあるのに、リハビリをすると疲れて、痛むから進んでいないと話す
マリアンヌは家の絵に階段や時計を書き足すと
次に夢を見た時、家の中に入ることができる
窓辺にいた少年はマークと名乗り、気づいたらここにいて
ここはあまり安全じゃないから出たいが、病気で歩けないと話す

チェスターフィールド先生の誕生日に好きなバラの花束を贈ろうと準備していたのに
先生は遅刻した上、マークから色とりどりのバラをプレゼントされて
マリアンヌにもあげると言って、マリアンヌは癇癪をおこす
腹立ちまぎれに、家の絵の窓を黒く塗りつぶし
柵を高くして、その周りの石に目を描いて、始終見張ってるようにする

夢の中で、家の中は格子のおかげで暗くなり
外ではブキミな石が絶えず見張っていて
自分のせいだと自責するマリアンヌに
絵で描いたものが現れる話を全然信じないマーク
マリアンヌ:あたしが夢を見なきゃ、あんたなんか死んじゃうわ

チェスターフィールド先生はマークの容態が悪化して
病院の呼吸する機械に入っていると話す
マリアンヌはまた自分のせいだと思い、夢の中で絵が表れる仕組みを懸命に説明する
退屈しているマークのために居心地のいいベッド、本棚、ゲーム、食べ物も書き足す

マークとマリアンヌは目のある石に怯え
なんとかこの家から脱出しなきゃいけないと思いはじめる

マリアンヌは自転車、灯台、ラジオを描き足す
マークは無限に出てくる食べ物を食べて、毎日、自転車に乗る練習を始める
現実のマークも驚くほど回復していく

マリアンヌがラジオをつけると、目のついた石たちは
灯台の光が通るたびに“光はごめんだ!”と叫ぶ
その数は増え、家にどんどん近づいてきている

2人は灯台の光で石の目が閉じるタイミングを見計らって家を出て
灯台に向かって進む
目のついた石たちも「つかまえろ!」と言って追いかけてくる


2人はようやく灯台にたどり着き、海を見て過ごす
マークは海に出たいと言うが、崖は危険なほど高く
ヘリコプターでもないと行けないが、マリアンヌには描けない
仕方なく、マークの言う通り、鉛筆を描いて、マークに渡す
マリアンヌはすっかり回復し、医師から好きに遊んでもいいと許可が出る
家族は海へ出かける計画をたてる
チェスターフィールド先生はマークもなんでもできるようになって
塩水プールに出かけるそうだと話す
毎日が忙しく過ぎて、久しぶりに灯台の夢を見たマリアンヌ
ヘリコプターの絵が描かれていて、マークはすでに去った後
マリアンヌも乗るようメモが置いてある

■訳者あとがき
キャサリン・ストーはもともと医者だったが
3人の子どもたちのために作品を書き始めたのがきっかけで作家になった
『ルーファス』『ロビン』『サースディ』のようなリアリズム系列の作品のほか
イギリス作家の中では怖ろしい本を書く作家として認められている
ストー:人間存在の状況につきものの不安とともに生きることを学ばねばならない
物語、ことにファンタジーは“病的な恐怖”から子どもを解放するための有効な手段の1つ