
■『総員玉砕せよ!』水木 しげる/著
これまで読んだ水木サンの自伝的な戦記を長編としてよりリアルに描いた1冊。初めての長編か?
実際は途中で腕を失くして前線から退くが、本作の主人公・丸山は、
その後の隊に居続け、ラストは壮絶な最期を遂げる。
「ああ、みんなこんな気持ちで死んで行ったんだなあ。
誰にみられることもなく、誰に語ることもできず ただわすれ去られるだけ」
と心でつぶやきながら。
氏のあとがきにも「ぼくは戦記物をかくとわけのわからない怒りがこみ上げて仕方がない。
多分戦死者の霊がそうさせるのではないかと思う」とある。
解説の足立倫行氏は、水木サン宅で延々とニューギニア訪問時の映像を4時間も見せられたという/驚
「氏が戦記マンガ家としてもっと評価されるべきだ」と説く。
水木サンのように一兵卒の立場から、戦争中の狂った日常をそのまま描き、
繰り返し描き続けるマンガ家さんは本当に貴重だ。
累々と積み重なった死体の山を写実的な画法で描いたページは見るに耐えないが、
これも現実に起きたこと。
人の狂気がこうも残酷で、空しいものかということを、しかと読んで知るべきなんだと思う。